【一粒の種から】実りの秋、今年一年の手しごとの結実を収穫~たわわに実る山ぶどう~

 

夏から秋にかけて、朝晩はつい「さむっ!」と声が出るけれど昼にお日さまが出ればまだ暖かく感じる季節、この寒暖差が山ぶどうの成熟を促します。

周りの田んぼでは稲刈りが始まる9月中旬、青々と茂っていた山ぶどうの葉が赤く色づき始め、実も緑から黒に変わって外から目立つようになると、今年の成り具合が地域の方々の話題になります。今年は「成りが去年より少ないねぇ。天気が良くなかったから…」という声が聞かれました。

そして、稲刈りがそろそろ終盤戦に差し掛かかる10月中旬が山ぶどうの収穫シーズン。秋じまいへ向けて一つ一つ作業が進むごとに「もうすぐ冬かぁ…」と少し寂しくなる季節でもあります。

 

▽稲刈りが終わった田んぼの一角にある山ぶどう畑

 

岩手県ではお馴染みの山ぶどうですが、他県ではあまりメジャーではないのではないでしょうか?

欧米がルーツの一般的なぶどうとは違って、山ぶどうは日本オリジナルの在来種で、古くは「古事記」にもその記載があるそうです。

在来種のため、それまで野生で育っていた山ぶどうを日本で初めて栽培した発祥の地が岩手県です。昭和46年に県北地域で始まり、以来東北を中心に栽培が広がっていますが、今でも岩手県が生産量日本一です。

 

▽一粒一粒が小さい山ぶどうの実

 

ここ、遠野市宮守町東部「宮守川上流地区内」で山ぶどう栽培をスタートしたのは今から4年前の平成29年のこと。それまでは、遠野市内の他の農家さんたちから仕入れてジュースをつくっていましたが、高齢化のため栽培をやめる人が増え、原料確保に苦慮するようになってきていました。そこで、地域の有志が「栽培に適さない田んぼとか土地はいくらでもあるんだから、自分たちで山ぶどうを栽培してみよう」と立ち上がり、栽培がスタートしました。

農家の有志とはいえ、初めての作物栽培にはやはり苦労するもの。特に山ぶどうは、一度植えたら何年も樹をそのまま育てるので最初が肝心です。品種の選定から棚の準備、土づくり…と、先輩農家さんから勉強したり、専門家に話を聞くなど試行錯誤の結果、平成29年の暮れには予定の苗木360本を植え終わりました。

 

▽まだ樹が芽吹く前の3月頃。こんな寒い時期から勉強会です

 

植えてもすぐには収穫できないのが山ぶどう。植えたあとの平成30年、令和元年は、ひたすら勉強と管理作業です。数年後の豊作をイメージしながら、剪定方法や、病気や虫の予防などの栽培技術を身につけてきました。

そして令和2年にやっと初収穫を迎えました。地元で収穫された山ぶどうをジュースにしてみると… 甘味が強い!品種を厳選したことや管理作業を頑張ってきた甲斐がありました。これなら美味しいジュースに仕上がりそうです。

とは言え山ぶどう。甘味も強いけれど酸味も強いので、加工場ではりんごジュースとブレンドして、そのままで飲みやすいジュースに仕上げています。そして、この山ぶどうの美味しさを色んな形でお届けするため、令和2年産の山ぶどうを使用したゼリーも新たに商品開発するなど、工夫を凝らして地域の良さを発信しています。

 

▽山ぶどうの加工 一度煮てからジュースを搾ります

 

そして今年の収穫はというと、前段で地域の方々が話していた通り昨年よりも少ない約500㎏。冬の大雪、春の遅い霜、梅雨の長雨、夏の猛暑、どれをとっても極端だった今年の天候が悪影響を与えたようです。

「今年はだめだぁ。」と言いながらも笑顔で1年を振り返り、反省し、次の年につなげる。一年に一回しか収穫できない作物だからこそ、一年一年がとても大事です。天候と格闘してきた年を振り返り、労をねぎらいながら、地域の方々が一緒に行う収穫作業はやはり特別な作業です。

 

▽今年の収穫、選別作業の様子

そんな数多くの手しごとから生まれた山ぶどうは、古来から滋養に良いとされ、薬の代わりとして用いられてきた歴史があるほどで、ポリフェノール、鉄分、食物繊維など沢山の栄養分が含まれています。冬眠に入る熊も好んで食べるのだとか。

 

この昔ながらの滋味あふれる味わい、そしてこの地域の手しごとを感じてもらえる商品のセットをご用意しました。これから寒くなる季節、栄養たっぷりの山ぶどうが皆さんのご健康に少しでも役立てば幸いです。

 

次回は、「どぶろく」についてお届けします。

 

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