【一粒の種から】2021年度産新米どぶろく初出荷~どぶろく製造までの道のり~

5月に植えた稲が黄金色に染まり、とても美しい風景を見ることができる9月中旬。

この時期から10月の終わりまで、稲刈りのシーズンがやってきます。

 

▽宮守川上流地域の田んぼの景色

 

 

 

山あいの手しごと屋さんを運営する宮守川上流生産組合では、皆さまの食卓に並ぶお米の他、家畜の餌となる飼料米、そしてお酒に使用される酒米の栽培をしています。

今回は酒米に注目し、酒米の収穫からどぶろくの醸造までを取材しました。

 

どぶろくとは、一説には弥生時代、お米と同時に中国大陸からやってきたとも言われている、昔ながらのお酒です。

遠野宮守地域では「どべっこ」と呼ばれ親しまれており、日本酒をつくる過程でろ過せずにそのまま飲む濁酒です。

そのため、お米の甘みや栄養価などがそのままぎゅっと詰まったどぶろくは健康的なのだとか。

 

昔からどぶろくに親んでいた遠野は、少ない醸造量でも酒類製造免許を取得できる、

「どぶろく特区」の、全国の第1号となりました。

そして私たちもこの宮守地域で昔から飲まれていた味を継承したい!という想いで、平成21年にどぶろくの醸造を開始しました。

 

そんな歴史深いどぶろくを醸造するために必要なのが、酒米です。

私たちの組合は平成23年に、遠野宮守の、夏の冷涼な気候でも大きく育つ「吟ぎんが」という品種の栽培をはじめました。

お米の育成担当者さん(以降Aさん)に、おいしいお米をつくる秘訣を教えていただき、私たちが作っているどぶろくのおいしさの秘密がわかったような気がしました。

 

 毎年3月~5月の田植え前は、種から苗を育てる大切な作業があります。

この時期にきちんと管理しないと、しっかりとした苗に育たず、ひょろひょろと伸びすぎてしまうとのこと。丈夫に育てることはものすごく大変な作業だと教えていただきました。

▽種から芽が出た様子

 

そして7月の半ばは、お米の生育に重要な時期ということで、とくに気をつけて生育状況を見るというAさん。

酒米で重要な、心白(お米の中心)を大きくするためにはこの時期の細やかな調整が欠かせないそう。

稲を抜いて茎を割り、減数分裂期という、穂の出る約2週間前の状態を見たり、低温に弱くなるこの時期の稲のために、田んぼの水量を調整したりしているとのこと。

また、このとき穂の状態を目で見てしっかり確認しながら追加の肥料を撒くかどうかの判断をします。

Aさんがこうして目利きをできるようになったのは、地域でアニキと慕われる農業のレジェンドの力があったから、とのこと。

それでも毎年違う気候には敵わないようで、「毎年1年生の気持ちでやってるよ」と、Aさん。

そして、「酒米も食べるお米も飼料米も、すべて“おいしくなあれ”の気持ちでつくってるよ」とお話をしていただきました。

その努力のおかげで、今年はお米が良く収穫できた年だったそうです。

しかし、おいしく作れるようきちんと管理して育てていても、鳥や鹿が田んぼを荒らしてしまう鳥獣被害が近年大きな問題となっており、悩みとなっています。

Aさんは、「今後も鳥獣害対策をしっかり行い、おいしいお米をつくりたい」と、来年に向けてのお米への想いを教えていただきました。

 

私は、山に囲まれてきれいな水が流れているから、この地域で育ったお米やどぶろくがおいしいのだろうな、と勝手に思っていました。

しかし、Aさんのお話をうかがい、小さな苗を育て、田植えをして大きく元気に育てて稲を刈る、そこにつくり手の細やかな作業や想い、努力がたくさん詰まっていて、それがおいしさの秘密なのだろうと思いました。

 

稲を刈り取ったあとは、心白を残すように精米して、どぶろくの醸造を行います。

どぶろくは、米、水、麹、酵母を混ぜ合わせ、一か月かけて発酵させることで完成します。

発酵期間中は朝と晩によく混ぜて、温度が上がりすぎないよう注意して管理しています。

 

▽精米後

精米歩合77%は、通常のどぶろく。精米歩合50%は、吟醸のどぶろくに使用します。

 

 

①お米を洗い水に漬けた後、蒸す

②一度広げ、冷ます

③十分に冷めたら、水、麹、酵母の入ったタンクに移す

➃こんもりとお米が盛り上がったら仕込み完了。

そこから一か月の発酵期間、朝晩よく混ぜて、温度が上がりすぎないように徹底的な温度管理をしていきます。

⑤発酵を止めるために火入れをしたあと、瓶詰めをして、皆さまのお手元に届く姿に!

 

 

加工場のどぶろくを醸造するためにはこのような過程を経て完成します。

このどぶろくのレシピは、昔から飲まれていたものを再現できるよう地域の方々と加工場で試行錯誤してできたもの。お米のつくり手とどぶろくのつくり手、どちらが欠けても完成せず、醸造しなくなってしまったらこの地域の味がなくなってしまいます。

今回、どぶろくができるまでの現場を一から直接見ることができ、ひとりひとりの努力があって、どれが欠けてもおいしいどぶろくをつくり出すことが出来ないことがわかりました。

 

今年は、組合初の試みで、新米で醸造したどぶろくをご用意しました。

愛情込めて育てた「吟ぎんが」だからこその、昔ながらの遠野宮守の味わいを

ぜひご賞味ください。

 

次回も、「どぶろくのはなし」をお届けします。

 

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