【宮守あれこれ】今も昔も遠野に根付く~どぶろく醸造秘話~

12月に入りいよいよ冬も本番。

雪が積もり、いよいよ遠野宮守らしい雪景色を見ることができる季節に突入しました。

 

▽先日の遠野宮守の雪景色

 

冬といえば、遠野宮守ではどぶろくがおいしい季節でもあります。

遠野では「どべっこ祭り」という、どぶろく(=どべっこ)を飲みながら遠野に伝わる伝統芸能、神楽を楽しんだり、カッパおじさんと呼ばれる遠野の河童にまつわる伝説をよく知っている方のトークショーを聞けるイベントがあるなど、冬にどぶろくを楽しむ文化が根付いています。

今回は、そんなどぶろくの昔から今までの普段聞くことのできないお話を、前組合長の多田誠一さんに取材してきました。

 

私たち宮守川上流生産組合の前組合長多田さんは、新しい組合長に引き継いだものの、地域の農作物や景観、町を守るために今でも率先して動いてくれているレジェンド!

そしてどぶろく事業を始めた凄腕の持ち主です。

 

 

  • どぶろくはお酒なのに家庭の味!?

皆さまは、昔ながらのどぶろくを飲んだことはありますか?

前回の記事では、加工場でのどぶろくの醸造方法や簡単な歴史をご紹介しました。

実は、昔は農家を営む日本各地のどの家庭でも、食材が腐敗しにくい冬に自家製どぶろくをつくる文化があったそうなのです。

しかし、酒屋が儲からなくなるという観点と、国の資金確保をするため、明治30年代から酒税法が適用され、家庭でお酒をつくることが禁止となりました。(現在も自家醸造は禁止されています。)

どぶろくも自家醸造は辞めたのだろうなぁ…、と思いきや、お酒が簡単に手に入る時代になるまでは密かににつくり続け、どぶろくを楽しんでいたようです。今でこそ驚いてしまいますが、そんな風に日本人に親しまれていたことで、現代でもどぶろくを飲む文化が残っていると思うと感慨深く感じます。

そして、遠野もその文化の残る地域のひとつなのです。

 

  • 自分たちでつくっちゃうくらいおいしい昔のどぶろくはどんなもの?

今は綺麗な白色やピンク色のどぶろくがあったりとさまざまですが、昔から親しまれていたどぶろくがどんなものだったのでしょうか。

日本のどぶろく文化にも詳しい多田さんに聞いてみました。

お米が貴重だった時代には、お米以外にムギ、キビ、アワなどの雑穀を入れていた家庭もありました。そのため味が落ちたり、色も灰色がかったり茶色くなってしまうこともあったそうです。

また、大きな米農家だとどぶろく用にお米を炊いたそうですが、そうでない家庭は食べ残ったご飯を使っていたため雑菌が繁殖しやすく、味も家庭によってそれぞれ違ったそうです。

お米以外の材料はどうしたの?と疑問に感じますが、酵母は酒屋さんから、麹菌は麹屋さんで手に入れていたそう。今でこそなかなかお目にかかれませんが、昔はひとつの町に一軒、麹屋さんがあったと言われるくらい必要とされていたところ。良い麹菌を使うとよりおいしいどぶろくになるんだそうです。

そして醸造したあとには飲み、減ったら注ぎ足し…を繰り返していたらしく、家庭独自のきちんとしたレシピはあまりなかったようです。(カスピ海ヨーグルトを増やすイメージとのこと!)

そんな自家製どぶろくはお振舞いとしても大活躍。

茅葺き屋根が主流だったころは、ご近所さんが集まり毎年一軒ずつ家の修理をし、そのときには家庭でつくったどぶろくをみんなに振舞っていたそう。

普段たくさん飲めるものではないお酒を、ここぞとばかりにたらふく飲み、そして次の年にはまた違う家のどぶろくを飲んで…と、各家庭を転々としていたそうです。

 

  • 大切に守られたどぶろく文化

自家醸造が禁止になったあともつくり続けていた地域では、どぶろくが役人に見つかり回収されると、当時貴重だった容器ごと持っていかれてしまうため、馬やにわとりの小屋に隠していたところもあったんだとか。

そこまでして大切に守り抜かれたどぶろく、イケないことだとわかっていても、私もタイムスリップしてみんなと交じって飲んでみたかったなあ~と思います(笑)

 

  • 多田さんの、他では飲めないどぶろくの味づくり

農家にとって、農作業のできない農閑期には多くの人が土建業などの出稼ぎをしていたなか、一部の農家は南部杜氏(日本三大杜氏のひとつ)から誘われ、酒蔵に出稼ぎに行くこともしばしば。その中のひとりが多田さんです。

多田さんは、この地域でつくられていたかつてのどぶろくを継承するため、今から約15年前にどぶろく醸造をスタートしました。遠野は「どぶろく特区」の第1号として認定されていたため製造が許可されていましたが、どぶろく事業を立ち上げるにあたってたくさんの苦労と努力をされたそうです。

試行錯誤しながらレシピ開発を進め、次第に注文が多く入るようになると、今までつくっていた量では足りなくなっていったそう。そのため、小さな寸胴を何個も使って醸造し、温度調整を手動で行なっていました。すべて手作業なため、品質を安定させるのにもとても苦労したと聞かせてくれました。

私たちのつくるどぶろくは、多田さんの酒蔵で働いていた経験を基に醸造し、地域の人に味を見てもらいながらレシピを調整してきました。

また、行った酒蔵が吟醸しか扱わなかったとのことで、どぶろくのレシピは他のものと比べても吟醸に近い味わいなんだとか。

今後は、「もう少し若い人にも飲みやすいどぶろくをつくってもいいかな?」と、もっと多くの人に親しんでもらえるような工夫も忘れていませんでした。

 

  • 遠野宮守の手しごとの味わいを体験しませんか?

今回、どぶろく事業を立ち上げこの地域の味わいをつくった多田誠一さんに取材をして、今私が住んでいる場所の文化がどうやって根付いていったのか、どういう背景があってどぶろくがつくられたのかを知ることができ、とても感動しました。

この地域のみならず、どんな場所でも現代まで続いているものはそれぞれその地域の人々が守り続けてきた大切な文化で、私たちもその文化を絶やすことなくこれからも守っていかなくてはいけないと、あらためて感じることが出来ました。

 

ネットショップでは、そんな遠野宮守の味をたくさん詰め込んだセットをご用意しました。内容は、手しごと屋さんアイテムの原材料であるトマトやブルーベリー、大豆やお米はすべて遠野宮守にある自社農園でつくられた自慢の品々です。

この地域に来たことがない方も、遠野宮守をつくり上げた先人たちが居た頃から今に至るまでの情景が思い浮かんだら嬉しいなと思います。

 

※自家醸造は現在禁止されています。

酒税法違反にあたりますので、絶対にマネをしないでください。

おすすめ商品はこちら

遠野宮守の味わいセット

2800円(税込)