【宮守あれこれ】~父から受け継いだ熊脂への思い〜

山あいの手しごと屋さんを運営している宮守川上流生産組合は、岩手県の内陸にある北上山地の中南部に位置する宮守町にあります。

宮守川上流地域の風景

 

以前は”宮守村”という人口5千人にもみたない村でしたが、平成17年10月に、隣接する遠野市と合併しました。
ここ宮守町は、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」を連想させるような、JR 釜石線の宮守川橋梁があることで有名で、
通称「めがね橋」の愛称で親しまれています。
昨年まで、東日本大震災からの復興を目的として、花巻駅~釜石駅間で蒸気機関車のSL銀河号が運行されていました。
SLが牽引する車両には、宮沢賢治の童話に出てくる動物や夜空が描かれており、まるで銀河鉄道の世界が飛び出してきたかのような世界観でした。

 △めがね橋

身近にあった熊脂

山あいの手しごと屋さんの人気商品である「熊脂」は、めがね橋からほど近い場所で工房を構えている、高橋蔵(おさむ)さんが作っている商品です。
高橋家の熊脂づくりは祖父から始まり、父、そして高橋さんへと代々受け継がれて来ました。
古来から伝わるこの「熊脂」は、猟師がやけどや切り傷、日焼けの赤み、ニキビやできものなどに塗る薬の代わりに使ってきました。もちろん高橋家でも、祖父の代から作っている熊脂は日々のお肌のお手入れやトラブルなどに欠かせない存在です。

 

高橋さんが「遠野食工房 蔵(くら)」を自ら立ち上げ、まもなく10年になろうとしています。
地元の高校を卒業後、旧宮守村役場に就職。役場勤めをしながら、ご自身も20才の時に狩猟免許を取得し、有害駆除など山の維持活動に関わっていました。


△直営店「サンQ ふる郷市場」に、納品にいらした高橋さん

役場を退職し、父のあとを

そんな折、お父様がご病気になり介護が必要な生活となった事をきっかけに、役場を退職されました。
それと同時に、30歳で事業を始め、工房を立ち上げる事に。
狩猟を始めた頃から熊脂を作っておりましたが、退職を機に時間をかけて研究を重ね、現在の熊脂が出来上がったとのことです。

学生の頃、青春の証であるニキビに悩まされた高橋さん。
お肌のお手入れにお父様の作る熊脂を使っていたようでしたが、獣特有の匂いがある為、使うのをためらうほどだったようです。そのような経験があったからこそ、自身が作る熊脂は匂いの少ないものを作りたい、と重きを置いて研究されたと聞かせていただきました。

 

さて、熊脂がお肌に良いと分かっていても実際どのようにお肌に良いのか、そもそも熊脂とはどんなものなのか。知らないことの多い熊脂や熊の生態を掘り下げてみましょう。

昨今の熊問題

その昔、雪に閉ざされた山間部では、長い冬を生き抜くうえで、熊は命と生活を守る特別な存在でしたが、近年では生息域を広げた熊が、人里へ下りてきて人や家畜・農作物などに被害を与えたりという社会問題になっています。特に2023年は人里への出没が多く、人的被害が多かったことは記憶に新しいと思います。

 

熊による被害対策のため、多くの熊が駆除されましたが、駆除に対する批判の声 が上がり、それに対して駆除の必要性に理解を求める声なども話題となりました。ときに有害獣とされる熊ですが、森林生態系での大きな役割の一つが食べた植物の種をフンとして出すことで植物の繁殖を助けるなど、熊は生態系を支える重要な役目を果たしています。人里と熊の生息地に、生活圏が重ならないようにすみわけを目指した対策が始まっています。


△熊の爪
 

熊は意外とグルメ

猟が解禁となり、高橋さんらが山に入るのは、熊が冬眠に入る11月から12月。食料が不足する厳しい冬を生き延びるために熊は冬眠に入ります。
そのため、夏から秋に大量に食べ物を摂取し体重を増やし、脂肪をつけることで冬眠に必要なエネルギーが蓄えられます。
本州や四国・九州に生息するツキノワグマの食べ物は、草花や木の新芽などの植物。山菜や季節の果実から、アリなどの昆虫と多岐にわたります。栄養価が高いドングリやブナの実などの木の実は、越冬前の大事な食べ物です。

山に生えている植物によって主食も変わってきますが、多く食べているものによって脂の質が変わってくるそうです。
高橋さんが猟に入る宮守町寺沢周辺の熊は、ドングリが主食。ドングリを主食とした熊の脂は、植物性油のように、さらさらとしているのが特徴です。
ツキノワグマは3才くらいから成獣となり、体重はおよそ60㎏ほどに。なかには100㎏を超えるものもいるそうですが、人間の成人男性と変わらない程度の体重という事に驚きました。

熊脂の作り方を教わりました

高橋さんの作る熊脂は匂いを気にすることなく、気軽に毎日のお肌のお手入れに使えるのが嬉しいです。
熊脂の作り方を取材し、獣臭さがしない2つのポイントを教えていただきました。

 

熊脂に用いるのは、冬眠の為にたっぷりと蓄えた皮下脂肪を使用。
使用する脂は切り分け、真空保存します。そうすることで冷凍焼けを防ぐことができ、匂いの発生を抑えることができるそうです。

 

△脂の部分のみを切り落とし、細かくカットしていきます

 

カットした脂を鍋に入れ、火にかけて溶かしていきますが、融点が低いので20℃の室温でも溶けていきます。
温度が高くなると焦げ付きますし、焦げ付きが製品の匂いにも影響するので、鍋で煮溶かす際、温度の上昇に気を付けているそうです。

△煮詰めながらさらに細かくカットすることでも、温度の上昇を防げます

 

ぶくぶく出ていた泡が消えたら出来上がりの合図。フィルター等で余分なかすを排除し、瓶詰めします。
出来上がったばかりの熊脂は、はちみつのようなきれいな琥珀色ですが、冷蔵庫で冷やし固めることで、混じりけのない真っ白な固形になります。
指を当てるだけですぐに溶けるので、よく伸びて肌につけやすいのが特徴です。

△液状のものと、固まった状態のもの

命をいただいている

熊は野生の生き物です。飼育し、脂を製造する事はできないので熊の脂は希少な存在です。たとえ狩猟に入ったとしても必ず捕獲できるものでもありませんし、常に危険と隣りあわせです。
熊脂を作る際に取り除いた熊肉も粗末にはせず、ご自身で調理していただいているとの事。また、有害駆除で使用した銃弾の薬きょうは、その年の秋まで保管し、
遠野郷八幡宮で行う慰霊祭に持って行ってから処分しているという、猟をする上での決めごとを教えてくださいました。

 

お客様の声

実際に熊脂をご購入してくださるお客様から、このような声をいただきました。

 

「アトピー性皮膚炎の為、顔や手の炎症がひどく、ステロイドを使用しても改善しなかったが、熊脂を使い続けているうちに痒みや腫れ、赤みがひいてきた」

 

「冬場の指先や肘、かかとのガサガサ乾燥等に塗ったところ、お肌がしっとりしてきた」

 

「ニキビ跡が残らず赤みが減った 」

高橋さんの作る熊脂は遠野で獲れた熊の脂、純度100%で出来ています。
その為全身に使えますし、お顔や口の周りにも安心してお使いいただけると思います。

この機会に気になっていた方は、是非お使いになって見てくださいね。

 

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熊脂

2,100円(税込)